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2012年12月29日 (土)

MMD静画講座 ~影の付け方いろいろ~

MMDで実写合成、いわゆるフォトジェミックというものをやるにあたって、ひじょうに重要な要素の一つが地面影。MMDでは標準で地面影をソフト内部で投影してくれる機能がついていて、方向や暗さなどをMMD内部で調整できるようになっています。ただこの「デフォルト影」はあくまでMMDの処理で描画しているので、現実世界における本物の影には遠く及びません。なので、リアルな静画、ほんとうに「写真っぽい」静画を作る場合、地面影の見え方、処理の仕方ひとつで出来栄えが左右されることになります。無論構図をいじって地面影が見えないような絵にすることもできますが。今回の講座では、そういった地面影の処理の仕方について、ぼくが行なっている方法をベースに紹介していきたく思います。

ちなみに難易度というか、仕上げの難しさという点でいえば、意外にも「影なし構図」のほうが難しいとぼくは考えるのです。MMDフォトというのはいわば現実と虚構がないまぜになって混在する絵なんですが、例えば地面影のある構図の場合、足元に伸びる影の存在によって「ああ、この人は本当にそこに立っているんだな」という錯覚 (?) を見せるのが簡単になるからです。その影がリアルであればなおのこと。一方影の見えない、バストアップなんかの場合、足元に伸びる影が見えないので、光の具合なんかを調整せずにバーンと上げてしまうと、「ありゃ、これは浮いてるな」という感じがどうしてもしてしまうのです (着眼点が地面影というのはあくまでぼく自身の場合。他の人からどう見えるかはちょっとわかりませんが)。それを影の助けなしに浮かせないようにする、見る人に「ああ、これは (合成じゃなく) 一枚の写真だ」と思わせるには、やはり相応の手間がかかると思うのです。なのでぼくがそういった構図を作る場合、だいたい上からきつめのエフェクトをかけて相殺していることが多いんです (このへんはまた後でくわしく話すとしましょうか)。だからといって、ヘタクソな影ではこれまた逆効果なのはもちろんなのですが…。あゝ難しい。

さて、本題。MMDにおける「影」の扱い方です。バストアップのような影のない構図の場合、MMD内部の光線処理である程度向きを付けた後でペンツールなどを使って陰影をつけるしか無いのですが、影の見える構図を扱う場合は大きく分けて4つの方法を取ることができます。すなわち、「内部処理のみに頼る/デフォルト影にボカシを入れる/レイヤー別出力で後付する/開き直って何もしない」。4つ目はまあ置いといて、前者三つのうち後ろに行くほどリアルさが増すのですが、同時に手間やPCへの負担といったものも増えていくので、その辺はモチベーションとかPCスペック、所有ソフトとの兼ね合いで決定するところでしょう。 記事を読む前に、まずこの記事とこの記事読んで基本的な部分についての予備知識を付けておくことをおすすめします。

San Gimignano - Town Square_8さて、画像を使ってちょっとこのへんの理屈の説明を。 これは元画像ですが、以前の記事でも書いたように、GT5の場合面倒でもまずマイドライバーを使って影の方向・濃淡を把握したほうがいいでしょう。影の向きと濃さをあわせてやるだけで、出来栄えがかなり違ってきます。







Blog00-00これはMMDデフォルトの影から何もいじってない状態。向き・色ともにトンチンカン状態です。これではダメでしょう。向きを変えるのはMMDの照明調整パネルでスライダーをいじることで簡単に出来ます。影の色は、「表示」タブから「地面影色設定」というところをクリックすると出てくるスライダーでいじれます。デフォルトは1.0で、これを0.0 (暗い) から2.0 (明るい) までスライドさせて調節することができます。






Blog00-01向きをあわせ、影色を0.0にした状態。だいぶ見栄えがするようになりました。初心者の場合、まず何が何でも「向き」と「濃淡」は絶対にいじるようにしましょう。それだけで脱初心者への第一歩は踏み出されるのだから。







Blog00-01 - Copyこれは上の画像を保存後、例のPhotocreator SEで周辺ボカシを行った所です。この写真では周りの影がすこしカッツリしているので多少浮き気味ですが、実写レベルならある程度までは馴染むはずです。ぼくも以前のロースペックPCではこのやり方でやっていました。







では、影がない場合はどうするか。GT5だと、アールヴァイラーはじめ特定のロケーションでドライバーの地面影が出ません。こういう場合、いくつかの対策が考えられます。

Blog00-02これはMMDの地面影を切って (「表示」→「地面影表示」をクリックしてチェックを外す) 出力したもの。実際のGT5内部でもこんなふうな表示なので、それに従った形です。しかしよくみると、たとえば手前の椅子なんかはちゃんと影が落ちていて不自然ですね。これはあくまで「GT5であることを明示的に見せたい」場合 (?) に使う方法でしょう。





こういうふうにGT5のソフトの仕様や、撮影時に曇っていたりなどの理由で影がもともと無かったり、あるいは人物の真下に来るような光の配置の場合。実はこれ、上に書いた「MMDの地面影をそのまま利用する」方法がもっとも生きるシチュエーションなのです。というのは、観察してみるとわかりますが、影は人体の真下に来るほど「円形」に近づくのです。人体を縦から見た断面形状が円形に近いからです。MMDの地面影というのはぼかしても100%、現実の影のようにはならないんですが、たとえば伸びた影 (人間の形がちゃんと出ている影) をMMDで出してぼかした場合のリアル度が70%とすると、丸い影に同じ事をした場合のリアル度は80%ぐらいになるのです。ちょっと日本語力がなくてどう説明すればいいのか、うまい言葉が思いつきませんが、まあそういうことで、「影が真下に来る光の具合」はMMDフォト的には狙い目です。

Shizuha01この写真が一例ですが (影はMMD直出力。それをぼかしたところ)、この人はドレスの裾の関係で影がうまいこと丸くなりません。それでも、たとえば「画面の下方向に伸びた影」よりは見栄えはいいです。








Lemya00これはもうちょっと丸に近い形状の影ですね。これはいろいろ後加工しちゃってるんですが (生データ紛失)、影の部分はやはりMMD影+簡易ぼかしで処理しています。








Blog00-02 - Copyさて、ふたたび先ほどの写真ですが、これはある種の「禁じ手」・フォトショップにご登場いただいたものです。モデルと背景をべつべつに出力し (やりかたは上のリンク記事ふたつめに書いてあります)、フォトショップで影を手書きで加えたもの。GIMPなんかでも似たようなことはできそうです。ベース/背景レイヤーとして背景画像を読み込み、その上に白バックのモデル画像を読み込んで、背景レイヤーのほうにブラシツールで影を描き込んでいます。不透明度は10~15%ぐらいと低めにして、塗り重ねで影の濃淡を出すようにしましょう。



Blog00-04この時、背景レイヤーの地面影とは別に、モデルレイヤーのほうで足元 (靴の脇とか) の陰影を描き込んでやるとリアルさが増します。また、靴のエッジ付近など、全体的に「フチ」に近づくほど影は真っ黒になる、ということを覚えておくといいかも知れません。イラストはそのグラデーションのかかり方を簡単に表したものです (光は靴の向こう側から来ていると仮定)。







XMasE - Copy (2)その技法で作ったのがこの写真。アールヴァイラーのような、光の加減が微妙なところで特に威力を発揮します。これも「背景画像」~「人物レイヤー」の順で重ねあわせて、背景側にブラシで影を塗っています。







Youka12ただこの方法も万能というわけではなくて、たとえばこういう複雑な形状の影は苦手なのです。このへんは影を描く人の画力なんかにも依存するかも知れませんが…笑。これはぼくがペンタブの性能テスト的に描いたものなんですが、ヘタクソですねえ。







Mystia00こっちはもう少しはマシと思われる絵。うまい具合に横におばちゃんがいて、そのおばちゃんの影具合からだいたいの方向や濃淡が推察できます。現実世界の写真ではマイドライバーなんて便利な代物はありませんが (撮影時に友人を同伴してモデルになってもらうことである程度は妥協できるかも) 、写真内にある小物やモブキャラの影をよく見ることです。これはちょっと影をぼかしすぎた気もします。もう少しシャープめのブラシを使えばよかったですね。





さて、ここから少し話がそれますが、「地面影が見えない場合の陰影」。これはもう、MMD側で光の向きをしっかり調整する、としか言えません。出てきた静止画の、たとえば顔の部分とか髪の毛の間とかに必要に応じて影を加えたりしますが、ぶっちゃけメンドクサイのでぼくはあんまり細かくはやりません。その代わりというかなんというか、そういう画像にはえてしてキツめのポストエフェクトをかけがちです。これはまあ、一種作者のクセみたいなもんですが、なんでもかんでもエフェクトでごまかそうとするのは良くない風潮ですね (と自虐ネタをここで一発…)。

Satori02その一例。これはまだ何も手を加えてない、出力直後の状態。MMDで光の向きをいじって、すこしモデル側を暗くしてありますが、それだけです。これをリアルと見るかどうかは個々の判断でしょうが、まあ薄目で見ればなんとなく実写に見えなくもないと言い切るにやぶさかではない、ような…






Satori02 - Copyその上にエフェクトをかけた写真。セピア・色温度・シャープネス・グレイニングの順で、PhotoCreator SEでかけています。こういうふうにキツいエフェクトを一括でかける意味はというと…







Blog00-03…これまた抽象的なイラストですが、まあセルを重ねた状態というか、福笑いのパーツ状態というか、とにかく赤い板が写真、青い板がMMDのモデルという風に見立ててください (イメージとしては板というよりは紙ですが)。その上からエフェクトというシートをまるごとかけて圧着してしまう感じです。赤い紙 (写真) の背景の上に青い紙 (モデル) をくっつけるとして、もちろん上にくっつけるわけだから段差が残るけど、そのさらに上からエフェクトというOHPシート (透明なシールみたいなヤツ) をかけてしまえば、見た目上は平面に近く見える…というような理屈。プラモデルの「研ぎ出し」工程を考えると分かりやすいかも知れません。エフェクトがけの場合、クリアコーターを厚めに吹いてペーパーがけをまだしてない、ぐらいの状態に近いかな。


ここでいう「エフェクト」というのは、白黒とかセピアとかの「全体にわかりやすい視覚的影響があるもの」として考えます (トイカメラ風とかグレインとかもそう。焼きこみとかはエフェクトではあるけど全体にかけるわけではないし、あまり明示的に「どう変わった」というのは見えにくいので除外)。こういうエフェクトはいわばドーピングというか、F1で言えばひところの予選用スペシャルガソリンみたいなもので、多用は決していいことじゃありません。絵柄がつまらなくなるというか、…なんだろうな、チューリップ畑の真ん中の一輪の薔薇は目立つけど、バラ畑の真ん中にバラがあっても誰も気づかない、というのかな、とにかく多用は禁物なのです。ぼくはけっこう多用してる気がしますが (冷や汗)。

Youka11エフェクトではないけど、それに近い働きをするものに「テクスチャ」があります。フォトショップなどのレイヤーが扱えるソフトを持っていれば重宝する存在です。左の写真は元画像+MMDモデルのレイヤーを結合して1枚にし、その上からテクスチャ4枚をオーバーレイ・ソフトライトで互い違いにかけています。この写真はもともとテクスチャがけはせずに済ませる予定だったのが、影の具合がもうひとつ良くなく、神頼み的にテクスチャで誤魔化してしまったものです。失敗作候補の救済なんかに使い勝手がいいエフェクト/テクスチャですが、多用が禁物とされているのは、もしかすると製作者がこういうものに依存してしまって作品そのもののレベルを上げようとしなくなるのを危惧してのことかもしれません (またも自虐ネタ) ね…。



最後ちょっと脱線気味でしたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。ぼくの手がけている静止画作品はここで見られるので、興味があればちょっと見ていってくれれば幸いです。

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