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2013年12月10日 (火)

F1規約の変更

12月9日の会議において、F1の規約変更に関する話し合いが持たれ、その席上でふたつの大きな変更がなされることが確認されたという。「ドライバー固定番号制」と「最終戦ダブルポイント制」である。いずれも、F1の根幹に関わる部分に触れておきながら、じつに的を射そこねた「悪法」であるとぼくは思う。前者は考えようによっては本質ではない、いわば枝葉末節の部分かも知れないが、後者は特に必要性がまったく感じられないものである。いずれの決定も、ここ最近「面白くなくなった」と叫ばれることの多いF1を必死にショーアップしようという努力は感じ取れる。しかしそれだけである。100メートルを8秒で走れても、ゴールと真逆の方向に走って行ってしまったら意味はないのだ。

F1において、車両ごとのカーナンバーが固定されたのは1973年5月のベルギーグランプリ以降のことで、こう書くと比較的最近のことのようにも思える。それ以降1996年まで、1と2以外のカーナンバーはこの73年5月時点でのナンバーをもとにして制定され、ここから有名な「ティレルの3と4」などが生まれた (神格化されているフェラーリの27と28が生れたのは1981年のことで、それ以前は11と12が主なナンバーだった。80年にシェクターが1を付けたことと90年にプロストが加入して1を持ち込んだ以外、フェラーリは1995年までこの番号を通し続けていた)。1996年に規約が改正され、3番以降のカーナンバーは前年のコンストラクター選手権順位にそって振り分けられることになり、以来今日までこのシステムは続いている。73年5月から95年最終戦までのカーナンバーシステムは、いわば「チームごとの固定番号」ということが出来る。73年にカーナンバーを固定化した際、あえてドライバーごとではなくチームごとに番号を与えた事実に注目する必要があるだろう。F1グランプリは、その起源をたどってみると、「メーカーやチームが用意した車に、探してきたドライバーを乗せて走らせる」という競技であった。まず車ありき、なのである。だから、ドライバーが何人かわってもティレルはカーナンバーは3と4のままで20年を過ごしてきたのだ。

ここへ来ていきなりドライバーに番号を付ける方向性に走った理由は容易に想像できる。ドライバーたちからの「もっとドライバー主体の戦いを見せたい」という意見、またファンからの「もっとドライバーの戦いが見たい」という意見に迎合してのことであろう。それに迎合すること自体はわるいことではないが、今まで車につけていた番号をはがしてドライバーに付けたからといって、それでどうにかなるような安上がりな問題ではないことはぼくにもわかる。むしろ無用の混乱を招くだけで終るのではないだろうか。ドライバーごとに番号を振るスポーツの代表として二輪のグランプリがある。ロッシの46やヘイデンの69などの有名どころは、あまり二輪レースを見ないぼくでも知っているが、もしF1がMotoGPを目指しますよ、というのであれば、ぼくとしては「はいそうですか」とでも言うしかないだろう。見る側が慣れてくれ、と言われたらそれまでな問題である。しかしF1はなんといっても四輪レースの最高峰としての格式があり、ぼくとしてはそれが崩れるのを見るのは本意ではない。これ以上、F1が二輪レースやアメリカのインディカーなどに軽々しく追従して、その格式をみずから揺るがすようなことはしてほしくないのである。

そして「最終戦でのダブルポイント」、文字通り最終戦に限り獲得ポイントを二倍とし、優勝なら50ポイント、二位に36ポイント、…といった具合である。これまでF1はさんざんバカげた規則変更をやってきたが、ここまでのものはぼくも久々にお目にかかる。F1をクイズ番組か何かと間違えていないだろうか。2014年の最終戦はアブダビGPということになっているが (暫定カレンダー)、あの心底退屈でうんざりするサーキットの一勝がシルバーストーンやスパ、ニュルブルグリンクやモンツァといった伝統のあるサーキットの二倍の価値を持つことになるのである。そもそも、「最終戦に限ってポイントを二倍与える」という考え方自体がどこかズレているように思えてならない。たしかネルソン・ピケだったと思うが、「F1チャンピオンというのは十六のレースの積み重ねの結果であって、今日落とした一レースのためにチャンピオンシップが左右されるという考え方はまちがっている」(大意としてはこんな感じだった。出典を忘れてしまったので詳細な台詞は確認のしようがない。ピケだとしたら86年オーストラリアGP後の発言だろう) という言葉が残っている。レースが十六あるなら、その十六のレースはみなひとしく価値を持つべきであり、それでこそ競技として成り立つ、という考え方である (といっても先例が無いわけではなく、たとえば80年代の一時期、世界耐久選手権にル・マン24時間が組み込まれていた頃にはこれに二倍のポイントが割り当てられていた。しかしル・マンはレース距離やその特殊性、象徴性からしても特別扱いされてしかるべきレースであり、F1でいえばモナコGPやフランスGPといった位置づけである)。

そもそも、競技を活性化してスポンサーや観客を呼び込みたいという魂胆があるなら、ポイント制度やらカーナンバーやらの上辺ばかり撫でていないで、もっと基礎的なところから始めるべきである。もちろんFIAとてバカの集まりではなかろうし、今まで彼らはそれなりに打てる手を打ってきた、あるいは打とうとしてきたのであろう。しかしその結果が現状であるというなら、FIAは結果としてなにひとつ有効な手立てを講じてこなかったということになる。FIAの怠慢と言われても仕方がない。

この会議の席上で、2015年からのコスト制限案の導入について合意に達したというが、これだって予定通り施行されるかどうかはなはだ疑わしい。チームに金が無いということは、とりもなおさず銀行家や投資家や実業家らスポンサーにとって、F1が投資対象としての魅力をすっかり失ってしまっているということである。スポーツというのは普通、そういった人心にうったえる魅力に満ちあふれているはずのもので、F1であればドライバー同士、マシン同士のエネルギッシュな勝負や観客の熱気、サーキットの荘厳ながら華やかな雰囲気といったものがそれに当たる。いずれも、つい最近までF1の世界ではどこにでも見られたものである。しかし今や、ドライバーは一部のトップ陣を除いてまるで陸揚げされたマグロか教習所から昨日出てきた若造のような走りしかしなくなり、マシンを見ればいつまでたっても先頭を走る青い車に誰も追いつけず、サーキットとなると伝統はおろか自動車レースを本当に理解しているのかもわからないようなくだらない三流国での冷めたレースばかり見せられるのが現状である。これでは金が入ってくるはずがない。

何事もやってみなければわからないというし、今回の規約改訂ももしかするとプラスの方向に働く可能性はある。しかしF1は今や確実に変質してきており、昔日の熱狂はすでに見られない。巨大なマネービジネスと化したF1は今後、どういった方向へ向かうのだろうか。現状のままでは、方向を見失ってうろうろ徘徊しているだけだと思うのだが。

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コメント

正直、最終戦だけポイント2倍は愚行としか言えないと自分も思いますけどね。
スーパーの特売じゃあるまいし、それがかえって不公平な結果を招くだけなんじゃないかと思うんですが…。
チームから反対の声は出ていたりしないんでしょうかね。今からでも考え直してほしいところ。

カーナンバーはどうでもいいです。でもベルニュがあの27番つけるのはかなり抵抗があります(まだ希望してるだけですが)。
憧れるのはわかるけど重みを考えて欲しい。

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